Sion
希愛は笑みを浮かべ、コクりとうなずいた。
彼はホッとしたような笑みを見せる。
「ありがとう。俺、嘉島 湖季(かしま こき)。よろしくね、花澤さん」
「ちょっと!季愛と仲良くならないで!」
頬を膨らませた律花が間に入ってくる。
そんな律花を嬉しそうに見る湖季の顔
二人を見て、お似合いのような気がした希愛だった。
先生がくるまでの間、三人は出会ったばかりにも関わらず、楽しそうに話していた。
湖季は希愛が喋ることができないと知っても、普通に接してくれる。
それが希愛にはとても嬉しかった。
「俺も手話、理解できるよ。昔、幼なじみに教えてもらってさ」
『幼なじみ…ですか?』
「そうそう。花澤さんの隣の席の奴。まだ来てないけどな」
そう言って湖季は希愛の隣の席を見た。
希愛の隣の席にはまだ誰も座っていない。
隣の席の人はまだ一回も見ていなかった。
「幼なじみって…女の子?」
「いや、男。初めて会ったときは女の子かも思ったくらい綺麗でさ。花澤さんとはまた違う綺麗な感じで…不思議な奴だよ」
『会って…みたいです。きっと…湖季さんと同じで優しい人なんでしょうね』
希愛がそう手話すると、何故か湖季はくすっと笑う。