Sion



知らなかった。
自分が律花に対して、こんな気持ちを抱くなんて。




とてもみにくい嫉妬心
幸せな律花を見るのが、こんなにも嬉しくて、辛いなんて。




律花はどうして、湖季をここへ連れてきたんだろう。
付き合い始めたことを報告するため…ではなさそうだ。




「って、あたしのことはどうでもいいの!」




と、律花は話を変えようとする。
湖季はそういえば…と話を切り出した。



「なんで俺を呼んだの?」




「なんでって…あいつのこと、色々聞けるかなって」



と、律花は希愛をちらりと見る。
希愛はふぅーっと息を吐いた。




「奏くんに…告白…したんです。そしたら、少しだけ待ってって言われて…」



その言葉の意味がよくわからなかった。
ただ、そのときの那由汰が悲しそうな、辛そうな顔をしていたから…




頷くことしかできなかった。




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