Sion




希愛の言葉に湖季はなるほどねと肩をすくめる。




「俺に那由汰のことを聞こうってことか。本人に聞けばいいんじゃないの?」




「あたしもそう言ったけど…そんな感じじゃないっぽいの。それに、あたしはあいつがその子にこだわる理由が分からない」




と、律花は唇を尖らせる。
湖季は「聞いてたんだ…」と意外そうに驚く。




律花は「ちょっとね」と詳しくは話さなかった。




「まぁ…あいつは話すの嫌そうだな。…花澤さん、どうしても聞きたい?」




湖季は希愛をじっと見る。




希愛の気持ちは…
コクりと首を縦に振った。




どうしても知りたかった。
那由汰が悲しそうな顔をしていた理由を。




律花が知っている、那由汰の『その子』のことを。
そして…湖季が今から話そうとしていることを。




真剣な真っ直ぐな目に湖季は肩をすくめる。




「じゃあ、話すよ。だけど、俺が話したっていうのは内緒にして」




と前置きし、湖季はゆっくりと話し出した。




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