Sion
クラスで紹介されたときも思っていたが、那由汰は周りより整った顔をしている。
男に言う言葉ではないが、『綺麗』という言葉が一番似合っている気がした。
『…何』
その声もノイズがかかってなくて、綺麗だ。
すぅっと耳に届く。
なぜだかわからないが、緊張してしまった。
『お、同じクラスの嘉島 湖季って言うんだ。奏くん、家こっちなの?』
湖季は那由汰の隣を歩く。
那由汰を見ると、『うん』と小さな声で頷いていた。
会話がそこで途切れてしまった。
湖季は頑張って話を続けようとする。
『俺も家、こっちなんだ』
『…ふーん』
また会話が途切れてしまう。
この時の那由汰に対する印象は『無愛想』『とっつきにくい』だった―――。