Sion




すると、那由汰は当然のように―――




『…友達だから』




と言った。




その時、湖季は気づいた。




これが那由汰なんだと。
那由汰を纏う空気と雰囲気が周りと違うのはこれなんだと。




きっと誰も那由汰のようにできない。
湖季は薄く笑みを浮かべた。




『無愛想』『とっつきにくい』
……そう思っていた。




でも、違った。




那由汰は最初に思っていたより、すごくいい。




『…友達じゃない、親友』




と、ニッと笑う。
すると那由汰は笑みを浮かべた。




『…勝手にすれば』




この瞬間から、湖季は那由汰と親しくなりたいと思った。
あれから5、6年経つが―――




那由汰といるのは居心地がいい。




あの頃よりも那由汰は口数が増えている。
きっとそれは、長い付き合いの中で那由汰が湖季を信頼している証なんだと思う。




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