Sion
那由汰が話そうとしないというのもある。
だが、湖季自身が知りたいと思わないのだ。
昔の那由汰を知ったところで、関係は変わらない。
それに……
「少し謎っぽいのがあいつらしいと思うんだ」
那由汰の全てを知りたいとは思わない。
少しくらい知らないことがあるほうがいい。
那由汰は誰にも入れない空気がある。
その空気に無理やり入りたいとは思わない。
それに…謎がある方が那由汰らしさを感じられる。
「あいつが話したいと思ったときは素直に聞いてやる。だけど、そうじゃない限り俺は何も聞かないし知りたいと思わない」
誰にも立ち入れないものがある。
那由汰が本当に全て話したいと思った人に話せばいい。
湖季が那由汰にとってそういう人じゃないとしても、この関係を壊そうとは思わない。
多分、那由汰よりも湖季が那由汰の親友であることを望んでいる。