Sion
それに、湖季自身『あの子』のことはあまり好きではなかった。
強気で勝気、自分より下の人に負けることを嫌っていた。
自分にプラスになることはどんなことでもする。
那由汰に『あの子』は似合わない。
そもそも空気が違うのだ。
交わることはない。
でも…那由汰は突き放せない。
湖季はため息をついた。
『花澤さんのことを気に入ってるなら、早く別れたほうがいい。花澤さんを傷つけるぞ』
『…ごめん、また…迷惑かけてる』
『それはいい。親友だろ?』
『……那由汰だけだよ、そういう人は』
と、那由汰は微笑んだ。
この話は…希愛に話すつもりはない。
那由汰の想いはちゃんと本人から伝えたほうがいい。
湖季は希愛が気になっているだろう、那由汰の彼女について話そうと唇を動かし
た。