Sion

彼女との出会い





あれは中学に入ったばかりの頃だ。
那由汰が珍しく湖季を遊びに誘ってきた。




「湖季…今日ヒマ?」




突然のことで湖季は驚いた。
那由汰から予定を聞かれるなんて今までなかった。
いつも湖季から那由汰を誘っていたから。




「ひ、ヒマだけど…どうした」




「連れていきたいとこ、あるんだ。…興味ないかもしれないけど」




「…どこだよ」




興味ないかもしれないってなんで連れていきたいって言うんだ。
俺は思わず眉をひそめた。




そんなおかしなところへ連れていくのか、と。




だけど、那由汰が言った場所に目を丸める。




「…スタジオ」




「…スタジオ?スタジオって音楽とかあの?」




「……そうだけど?」




那由汰が首を傾げる。
首を傾げたいのはこっちだ。




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