Sion
そんな驚きを抱えたまま、湖季は那由汰に連れられてスタジオに来た。
その時、湖季は思わず那由汰に尋ねた。
「なぁ、なんで俺を連れてきたんだ?」
すると、那由汰はきょとんとした顔を見せる。
「なんでって…親友だから」
まさか、那由汰からそんな言葉が聞けるとは思っていなかった。
あまりにも突然で驚いてしまう。
湖季だけだと思っていた。
那由汰のことを親友と思っているのは。
那由汰はそう思っていないと思っていた。
顔や表情、言葉に出さない奴だから。
でも、那由汰はハッキリと言った。
『親友だから』と。
「…そっか」
そう言われたら、それ以上何も聞けなかった。
他にも聞きたいことは山ほどあった。
でも、それを聞かなくていいほど、嬉しかったんだ。