Sion




湖季は那由汰に連れられ、ある人の元へと案内させる。
その人は那由汰を見ると、にっこりと微笑んだ。




「久しぶりだね、なゆ」




「…久しぶりです、弓弦(ゆづる)さん」




弓弦と言われたその人はどこか那由汰に似ている気がした。
男の人にしては綺麗な顔立ちが印象に残る。




弓弦はくすっと笑う。




「意外だったよ、なゆが引き受けてくれるなんて。今まで嫌がっていたのに」




弓弦の言葉に那由汰は瞼を落とす。




「……弓弦さんとならしたいと思ったんで」




目を開けた那由汰の目はまっすぐだった。
凛と強く、決意に満ちた瞳に見えた。




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