Sion




その間に湖季達はソファーに腰をかけた。




隣の部屋についた優愛は部屋に置いてあったヘッドホンを耳に付ける。
こちらに笑みを見せる。




「…奏さん、いいですか?」




「…うん」




那由汰の首が縦に振られたのを見ると、優愛はそっと目をつぶる。
すぅっと大きな息を吸ったと思えば、その容姿からは想像できないほどの大きな音でメロディーを奏でる。




その音域の広い歌声と力強さが心を打つ。




思わず息を飲んでしまう。




優愛はとても自信満々に歌う。
だが、その姿勢が歌声を強くしているように思える。




弓弦の言っていたことがよくわかる。
確かにその歌声は本物のようだ。




素人の湖季が聞いても、そう思えた。




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