Sion
優愛の歌声を聞きながら、那由汰は口を開く。
「…弓弦さんが彼女を見つけたんですか?」
「まぁ…な。オーディションの審査員をしていたとき、優愛に出会った。
オーディションには落ちてしまったけど、俺が密かにレッスンしてここまで育てたんだ」
『ふーん』と那由汰は相槌をうつ。
那由汰は歌っている優愛をまっすぐ見ていた。
そんな那由汰に弓弦は笑みを見せる。
「…気に入ったか?いい声だろう?」
「まだ荒削りって感じですけど…これから積み重ねていけば…って感じですね」
「…お前が褒めるなんてよっぽどのことだ。嬉しいよ」
と、弓弦さんは嬉しそうに笑う。
那由汰は『そんなことない』と否定した。
「こういう機会なんてないから言わないだけですよ」
「でも、お前は俺の頼みを引き受けてくれた。優愛のことも気に入ってくれたみたいだし、よかったよ」
と、ソファーから立ち上がる。
弓弦は優愛の元へと向かった。