Sion




いつも話したがらない那由汰が少しだけだけど話してくれる。
こういう時じゃないと、那由汰のことを知れない気がした。




那由汰は『どうだろうな』と微笑む。




「小さい頃からピアノしてて、ある子に言われたんだ。
『あなたには才能がある。その才能を埋めるの?その才能があなた個性なのに?』って」




とても大人な言葉だった。
小さい頃と言うことは、こっちに来る前の話だろう。




「吃驚した。今までそんなふうに思ってなかったから。その子の言葉でピアノを続けようと思った。
今も…その言葉だけで続けてるんだ。……約束でもあるんだ」




一瞬だが、那由汰の本質がわかったような気がした。
小さい頃に言われた言葉を今でも胸に仕舞っている。
『約束』として、今も守り続けている。




とても真っ直ぐで健気
いつもと違う、本当の那由汰が見えた気がして嬉しかった。




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