Sion
強気で勝気な彼女
それから一週間、那由汰は弓弦の元へと通った。
那由汰は正式に弓弦から頼まれた仕事を引き受けたのだ。
優愛がデビューするため、歌手として活動するために。
その練習やデビューした時の曲を手がけることになった。
それが今から3年前のことだ。
もうすぐ、優愛はデビューする。
那由汰は優愛の為に手を尽くしてきた。
それが仕事であるとは思えないほどに。
今でも覚えている。
那由汰と優愛が付き合い始めたと知った時のことを―――。
あれは夏休みのことだった。
夏休みで暇にしていた湖季を那由汰はまたスタジオへと連れてきた。
そこには笑顔を浮かべた弓弦と大人な服を着て不満そうな顔をしている優愛の姿があった。
優愛は腕を組み、じっと那由汰と湖季を見る。
「二人って仲良いんですね」
「まぁ、小学4年生からの付き合いだから」
湖季が答えると、優愛はふーんと相槌をうつ。
だが、まだ不満そうな顔をしていた。