Sion
その顔に思わず眉をひそめてしまう。
不思議な空気が部屋に広がっている気がした。
その空気を破ったのは、弓弦だった。
パチンッと両手を叩き、笑みを浮かべる。
「なゆが来たことだし、レッスンを始めよう。二人っきりのほうがいいか?」
と、意味ありげな笑みを見せる。
優愛はキッと弓弦を睨んだ。
「弓弦さん、変なことを言わないでください」
「ごめん。優愛、今日も頑張れよ」
と、弓弦は優愛の頭を撫でた。
優愛の顔が少し赤くなったような気がしたのは、湖季の気のせいだろうか。
それよりも気になったのは、優愛の態度だった。
初めて出会ったときはとても大人っぽく、丁寧な女の子だった。
それが今では強気であの時の態度と一変している。
これが優愛なのだろうか。