Sion
弓弦は知っていたようで、あの時と同じように優愛に接している。
「デビューできるのを楽しみにしてる」
「あたしがデビューしたいって言ったんだから、デビューしてみせるわ。…絶対に」
その言葉には決意のようなものがこもっているような気がした。
それを聞いて、弓弦は満足そうに微笑む。
「だったら心配いらないな」
弓弦さんは優愛の頭を撫でていた手を下ろす。
そして、那由汰を見てにっこりと微笑んだ。
「時間とって悪かったな。もう、レッスンするんだろ?」
「…うん。優愛、行こう」
那由汰は頷くと、すたすたと隣の部屋へと向かって歩く。
優愛は長い髪をなびかせて、ふっと笑った。
「…那由汰、今日もよろしくね。弓弦さん、行ってきます」
二人は隣の部屋へと移動する。
二人が居なくなった部屋で湖季は長いため息をついた。