Sion
付き合った理由
那由汰の仕事が終わったあと、二人で夕暮れに染まった道を帰っていた。
那由汰も湖季も話そうとしなかった。
何を話せばいいか、分からなかった。
その沈黙を破ったのは那由汰だった。
「湖季…なんか変。弓弦さんに何か…言われた?」
「そんなことないと思うけど…」
「嘘。いつもの湖季と違う」
他人に興味を示さない那由汰のはずなのに…
こういうところはよく気がつくやつだ。
いつもとの違和感を感じやすい。
いつもは嬉しかったのに、この時は気持ちが晴れなかった。
「…あの子と付き合い始めたんだって?」
那由汰は目を丸める。
「…知ってたんだ。…弓弦さんから聞いた?」
「ついさっきだけどな。…なんで言ってくれなかったんだ?」
別に知らなくてもいいことだ。
那由汰が誰と付き合おうとそれは那由汰の勝手で、湖季が口出しすることじゃない。