Sion
でも、こんなに傍にいる。
小学4年生からずっと那由汰は隣にいる。
なのに…那由汰は大事なことを言ってくれない。
そのことが引っかかっているんだ。
那由汰は顔を曇らせる。
「…ごめん。言えばいいか、分からなかった。湖季が思ってるような付き合いではないから…」
「でもさ、那由汰が抱えてるんだったら言ってくれたほうがいい。何も知らないより…そのほうがずっといい」
那由汰はコクりと頷く。
ふぅーっと長い息を吐く。
「優愛と…付き合ってるのは優愛の提案なんだ。曲を作る上で一緒にいたほうがいいって」
「それくらいなら付き合わなくていいだろ。なんで付き合う必要があるんだ?」
湖季は眉をひそめた。
優愛の考えがよくわからない。
「優愛のデビューする曲は…彼女しか歌えない…っていう曲にしたいらしいんだ。
そのためには…ちゃんと彼女を知らないといけない。…デビューするまでの話だ
よ」
そう那由汰は言うが、湖季はそう思えなかった。
凄く違和感があった、今日の優愛は。