Sion
湖季は携帯に映し出された時刻を確認する。
まだ待ち合わせには間に合う。
少しくらいならいいだろう。
湖季は頷いた。
「いいよ。どっか行く?」
「じゃあ、あたしのおすすめの店に行こうか。ここから少し行ったところにあるから」
と、優愛は歩き出す。
湖季は不思議な気持ちになりながら、優愛のあとをついて行った。
入ったお店はとてもオシャレな雰囲気なカフェだった。
優愛のおすすめという意味がわかる。
優愛が好きそうな感じのお店だ。
二人は一番奥の個室へと案内され、椅子に座った。
ホットコーヒーを頼み、運ばれて来た頃に優愛は口を開く。
「那由汰…最近…少しおかしいの」
「おかしいって…何が」
と、湖季は笑うながらコーヒーを飲む。
優愛は顔をうつむいていた。
「あたしと仕事をしているときも…ほかのことを考えている。休憩のときとか…あたしのじゃない曲を弾いている。
こんなこと…今までなかった…」
それを聞いて、湖季は一つ心当たりがあった。
那由汰が気になっている女の子
那由汰はその子のために曲を作ったと言っていた。