Sion
湖季も少し聞きたいことがあった。
「なぁ……那由汰のこと、好きか?」
突然の質問に優愛は動じなかった。
「それは…どういう意味の?」
「今、優愛が考えてるほう」
湖季がそういうと、優愛はふっと微笑む。
「好きよ。でもそれは彼の才能を。人柄も好きだけど、特別な感情なんてない」
それを聞いて、湖季は静かにホッとした。
優愛はそんな湖季を見て微笑む。
「湖季って…那由汰のこと考えすぎ。そんなにあたしと付き合って欲しくない?」
と、意地悪な笑みを見せる。
それは湖季が知っている、いつもの優愛だった。
「正直…つりあうとは思ってない」
「正直すぎ。あたしが傷つくとは思わないの?」
「そういう性格じゃないだろ」
『まあね』と笑みを見せる。
コーヒーを飲みながら、くすくすと笑う。