Sion
湖季の言葉を受け、希愛はニッコリと微笑む。
「本当に…湖季さんは…優しいです。…奏くんのこと、諦めなきゃいけないのかなと考えてしまいました…」
希愛は悲しそうに微笑む。
想いが揺らいでしまったのは優愛と出会ってしまったからだ。
だが、湖季の話を聞いて…那由汰を知った。
那由汰があの時悲しそうな顔を見せたのは、葛藤があったからだ。
那由汰は優愛のデビューを見届けなくてはならない。
それが優愛と交わした約束だったから。
でも、自分の気持ちも大事だった。
裏切ることも、隠すこともできない。
那由汰はただ約束を守り、自分を大切にすることを決めた。
でも…希愛はもう待つのは嫌だった。
爽を失って、声を失って…目の前が真っ暗になった。