Sion
そんなこと、初めから分かっている。
優愛はその対象ではないのだから。
それでも、伝えることを選んだのだ。
「好きだよ、那由汰。どういう好きかは…分からない。でも、那由汰とこのまま一緒にいたいっていう気持ちは嘘じゃないよ」
「優愛は…とてもいい奴だよ。頑張って…強く…勝気で…俺にはなくて…憧れがある。
でも……その感情は…俺にはないよ」
那由汰にこんなにもはっきり言われたのは久しぶりな気がした。
歌声や歌い方についてはアドバイス…に近いものがあった。
これが那由汰の本心なんだろう。
ずっと後悔があった。
ずっと懺悔に似た気持ちがあった。
無理やり付き合うことになった。
それでも那由汰は従ってくれた。
もしかしたら今回もそうかもしれない。
そういう思いがどこかにあったのだろう。