Sion
教室で
教室に戻ると、さっき体育館の壇上で見た男の子が席に座っていた。
それを見て、希愛は目を丸めて驚く。
彼の周りには女の子がたくさん囲うように立っていた。
そんな女の子たちを興味なさそうに見る、男の子の姿
湖季はその光景を見て、「あぁー」と声を落とした。
「また囲まれてる」
『またって…よくあるのですか?』
そう、手話をすると、湖季は頷き、ため息をついた。
「しょっちゅうだよ。この光景も何回見たか分からないくらい」
律花を見ると、不機嫌そうにしていた。
ムッとした表情で、男の子を囲うように立っている女の子達を睨んだ。
「と、巴さん?」
湖季が律花の名を呼ぶと、律花は不機嫌そうに話し出す。
「なんなの。あんなんじゃ、希愛が座れないじゃない!」
その機嫌の悪い、怒った声に湖季は何も言えなかった。