Sion
この手で背中を
少しすると、湖季がスタジオの扉を開ける。
湖季の姿を見て、那由汰は目を丸め、優愛は切なそうに微笑んだ。
「湖季…ありがとう」
「…電話をもらったときは吃驚した。けど、来たいっていう子がいたから」
優愛は湖季の後ろに見えた女の子を見て驚く。
その子は最近、出会った希愛だった。
だけど、優愛は希愛を見て納得する。
希愛と那由汰はどこか似ている。
那由汰の弾いていた曲は希愛のことを思って書いた曲なのだろう。
切なくて儚くて…とても希愛に合っている。
優愛はため息をついた。
「…あなただったのね」
「優愛さん…わ、私…」
「何も言わなくていい。分かってるもの。だから…何も言わないで」
二人の想いが繋がっていることは理解している。
痛いほど、あの曲から伝わってきた。