Sion
声を閉ざした時に那由汰は優しく手を差し伸ばしてくれた。
「私が…います…。今度は…私が…奏くんを支えるから…」
どうか、届いて欲しい。
精一杯のこの気持ち。
どうか、届いて欲しい。
優愛が背中をおして応援してくれた想い。
しばらくそうしていると那由汰の唇が動く。
「俺も…希愛のこと、好きだよ」
那由汰が振り返る。
希愛の顔を見上げ、頬に触れる。
「だけど、希愛のことを不安にさせてしまう。悲しそうな顔を見るのは…嫌なんだ」
「…大丈夫。奏くんのこと…信じてます…」
だから心配しないで欲しい。
那由汰がこれからすること、なんとなくわかっている。