Sion
6年経った今でも埋まらない溝
どうしたら埋まるんだろう。
どうしたら会ってくれるだろう。
希愛はそればかり考えていた。
ゆっくりと目を開ける。
『また来るね』と希愛はお墓に向かって微笑んだ。
「…那由汰、ありがと」
「もういいのか?」
希愛はコクりと頷いた。
身を翻し、去ろうといた目線の先に見覚えのある女性がこちらに向かってきた。
風で靡いている長い髪を手で押さえ、目を細めている。
年月が経ったが、あまり変わっていない。
「理緒…さん…」
震える唇でその名を呼んだ。
女性は下をむいていた顔を上げて、こちらを見る。