Sion




他に何を話したらいいか、わからなくなる。




「じゃ、私たちはこれで…」




早く立ち去ったほうがいいような気がして、希愛は理緒の横を通り過ぎようとする。
そんな希愛を理緒は声で引き止めた。




「待って。すぐ終わるから」




希愛が振り返ると、理緒は花を挿し、手を合わせていた。
線香の煙が風に揺れる。




手を合わせ終わると、スタスタと希愛に近づいた。




「この後何も無いなら…私の家にいらっしゃい。久しぶりに…希愛ちゃんと話したいわ」




そう言うと、那由汰の方へ目を向ける。




「あなたもよかったらいらっしゃい。…子どもの世話は大丈夫かしら?」




「好きです、子ども。二人が話している間に面倒見てますよ」




「ふふっ、助かるわ」




不思議な緊張感が希愛を支配する。
前を歩く理緒の表情を読み取ることができなくて…




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