Sion




最後に怒った時の原因は希愛にあった。
相手はクラスの女の子だった。




声を出すことができない希愛に対し、その女の子は冷たい言葉を浴びせた。
「面倒くさい。実は声出せるんでしょ?」
その言葉を聞いた律花は希愛の代わりに怒った。




「この子の気持ちも知らないで勝手なこと言わないで」と。
律花が自分のために怒ってくれたことは希愛も嬉しかった。




だけど、そのせいもあって律花の傍に女の子が寄らなくなった。
自分のせいだと希愛は泣いたことがあった。




でも律花は後悔していないと言った。
「希愛のことを悪く言う人と仲良くなんかしたくない。あたしはずっと希愛の味方なんだから」と。




今だってそうだ。
律花は希愛のために怒っている。




あの時と同じようになりそうな気がした。
それが嫌で、希愛は律花を後ろからぎゅっと抱きしめた。





< 22 / 303 >

この作品をシェア

pagetop