Sion
理緒の車で理緒が住んでいる家まで向かっている間、一言も言葉を交わすことができなかった。
何を話すつもりなんだろう。
希愛の頭はそのことばかり考えていた。
理緒が住んでいる家はまだ新しいマンションだった。
理緒は鍵を開け、扉を開ける。
すると、パタパタと駆け出す足音が聞こえてくる。
「お母さんっ!」
理緒はしゃがみ、子どもを抱きしめた。
「ただいま」
その子どもを見て、希愛は言葉を失う。
理緒が抱きしめたその子どもは爽によく似ていた。
希愛の記憶にある、小さい頃の爽に…
とても懐かしくて、涙がでそうになった。