Sion
その子どもは嬉しそうに理緒に抱きついている。
ふと、その目と視線がぶつかった。
「お母さん、この人たちはだれ?」
「お母さんの知り合いよ」
理緒は身体を離し、子どもの両肩に両手を置く。
「少しお姉さんとお話があるから、お兄さんと遊んでいてくれないかしら」
「う、うん…僕も居ちゃダメなの?」
理緒は少し悲しそうに微笑む。
『ごめんね』と優しく手で髪を撫でた。
すると、子どもは『分かったよ』と少し悲しそうに笑った。
「お兄ちゃん、僕の部屋に行こっ」
「うん。案内して」
那由汰は『頑張れ』と希愛の背中を少し押した。
背中を触られたところがポカポカと温かい。
さっきまでの緊張が嘘みたいになくなっていく。
「…希愛ちゃん、遠慮せずに入って」
希愛は靴を脱ぎ、理緒のあとを歩いた。
少し柔らかな木の匂いが部屋に広がっている