Sion




二人の間にはいつも爽がいた。
爽がいたから繋がっていられた関係だった。




「希愛ちゃんは…爽が亡くなってから声が出なくなってたって聞いたわ。でも、今は声戻っているのね…」




「彼の…おかげなんです。彼のおかげで…前に進めて…」




こんな話をするのが今は辛い。
理緒の目の前でしてもいいのか不安になる。




気づけば、希愛は顔をうつむいていた。
理緒と目を合わすことができない。




「希愛ちゃんは…今、幸せ?」




どうして、こんなことを聞くんだろう。
理緒の表情を見るのが怖い。




希愛はぎゅっと制服のスカートを握る。




「幸せ…です。…ごめんなさい」




自分だけ幸せな気がした。
理緒がまだ、自分のことを許していない気がした。




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