Sion
理緒が初めて爽と希愛の住む家を訪れた時のことだ。
爽と仲がいい希愛のことについて理緒は少し嫉妬した。
『爽と妹さん、仲いいのね。なんだか羨ましい』
理緒がそう話すと、爽はくすっと笑った。
『血は繋がってないんだけど…凄く懐いてくれるんだ』
爽と希愛の血が繋がっていないことを理緒は聞いていた。
聞いていたから、仲がいい二人を見て不安になったのだ。
『…本当に妹なの?』
聞いたあと、馬鹿だなと思った。
爽は『何言ってんの』と笑っていた。
『妹だよ。でもそうだな…家族って感じかな。俺には家族が居ないのに、まるで当たり前のように家族のように接してくれる。
親が居なくなって…この家に引き取られて、希愛が生まれて…それでも本当の家族のようにいてくれる。…俺が欲しかったものがここにあるんだ』
理緒は爽の悲しみを理解していた。
爽が欲しかったのは『本当の家族』
血が繋がっていなくても、爽が暮らす家は『本当の家族』のようで。
少なくとも爽の悲しみは薄らいでいっていたんだと思う。