Sion
すると、律花は戸惑いながら振り返る。
「…希愛?」
希愛はぶんぶんと首を横に振る。
その小さな子供のような姿に、律花は毒気を抜かれる。
「…大丈夫、何もしない。希愛がいいなら…あたしは怒らないよ」
それを聞いて、希愛はホッとした。
湖季もそうだったようで、肩をすくめていた。
「巴さん、凄く怖かったよ」
「じゃ、そうならないようにこれから接してください」
ツンッと律花は冷たい態度をとる。
だけど、湖季は動じない。
ふっと微笑んだ。
「そうしますよ~」
そう言って湖季は男の子の机へと歩き出す。
一人の女の子の後ろに立ち、声をかける。
「ねぇ、そこの君」
軽い口調に律花は「なにしてるの、あいつ」と呆れる。
まるでナンパをしている人のようだった。