Sion
パタパタと遠慮するように歩く足音が聞こえる。
そちらを見ると、那由汰が戸惑い気味に歩いてきていた。
「…話の邪魔した?」
希愛はぶんぶんと首を横に振る。
『大丈夫』と笑顔で答えた。
那由汰のおかげで話すことができた。
今までの時間を埋めることはできないが、少しあの頃に戻ったような気がした。
爽と理緒、そして希愛で過ごしたあの頃に。
「那由汰…爽理くんは?」
「部屋にいるよ。ちょっと飲み物を取りに来て…」
「…用意しますね」
そう言って理緒はソファーから立ち上がる。
那由汰は『すみません』と軽く頭を下げた。