Sion




妬いてはいない。
ただ、少し唇を尖らしてしまう。




みんな、那由汰に惹かれる。
那由汰と人柄に…




それは希愛も同じだった。
みんなと同じように惹かれた。




だから、惹かれる理由は分かっている。
だけど、みんなが惹かれていくのが不安になる。




「…ちょっとだけ不安なだけだよ」




希愛が素直にそう伝えると、少し嬉しそうに那由汰が微笑む。
そして耳元でそっと囁いた。




「大丈夫。…希愛だけだから」




恥ずかしいけど幸せだった。
那由汰と付き合って、こうして傍にいられて。




だから、この幸せがずっと続けばいいのに…と願っていた――。




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