Sion




希愛の母親は理緒を見ると、にっこりと微笑んだ。




「理緒ちゃん、お仕事お疲れ様。今日はいつもより遅かったわね。お仕事忙しいのかしら」




「愛子(あいこ)さん、いつもすみません。この時期はバタバタしていまして…中々抜け出すのが難しいんです」




愛子…というのが希愛の母親だ。
希愛を育て、爽を引き取って我が子のように愛した人。




愛子は理緒のことも自分の娘のように接する。
理緒にとっても愛子は母親のような存在だった。




ついつい、愛子には何でも話してしまう。
愛子自身も理緒の話に優しく耳を傾けていた。




「いつでも頼っていいのよ?あなたは爽の奥さんで私たちとは家族も同然なんですから」




「ありがとうございます。でも、頼ってばかりもいられませんから…」




理緒はこの家の家族に頼ることに少し抵抗を感じているみたいだった。
温かく優しい環境にいると、甘えたくなってしまうからだと希愛に話していた。




それでもいいと希愛達は思っていた。
だが、理緒はそう思ってはいないようだった。




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