Sion
愛子はふっと微笑む。
「頼ることの何がいけないのかしら?甘えることの何がいけないのかしら?姓は違っても私たちは『家族』ですよ?」
その言葉に理緒は瞬きをする。
戸惑いながらも、素直に礼を言った。
「ありがとうございます。でも、自分の親とうまくいってもいないのに愛子さんたちに頼れないですよ。
彼がいないのに…花澤家と仲良くするなんて…」
理緒は少し下をうつむいた。
そんな理緒に、愛子は笑みを絶やさずに話す。
「夏川…爽はずっとそう名乗ってきたわ。それでも私たちは爽を我が子のように育てた。
そのことにあの子は抵抗を少し感じていたようだけど…【家族】には素直に甘えていいのよ。私たちとあなたは他人ではないのだから」
その言葉に理緒は目を見開く。
力が抜けたようにふっと微笑んだ。
「少し…考えさせてください…」
愛子は満足げに微笑んだ。
「理緒ちゃん達が家族になってくれたら嬉しいわ。ねぇ、希愛」
「……うん」
母親に見抜かれてしまっていたなと希愛は感じた。
希愛がそう望んでいるから、愛子は理緒に話したんだろう。