Sion
束の間の幸せ
次の日、那由汰に理緒のことを話すととても嬉しそうに微笑んだ。
『よかったな』と優しく希愛の頭を撫でた。
「だから、いつもより嬉しそうなんだ」
「…バレてたんだ」
希愛は両頬を両手で覆う。
隠していたつもりだったが、表情に出てしまっていたみたいだ。
「じゃあ、爽理たちとは住んでいるのか?」
「うん。今日、荷物を家に運んでくるって。私、手伝いするつもりだから今日は一緒に帰れないや…」
『ごめん』と両手を合わす。
すると、頭上から『なんで謝るの』という不思議そうにする声が降ってきた。
「なんでって…一緒に帰れないから…」
「俺も手伝うよ」
ごく自然に当たり前のように言うから、希愛の反応が少し遅れた。
「…え?…いいの?」
尋ねると、那由汰はふっと微笑む。
「…当たり前だろ」
その優しさが温かくて、
とても嬉しくて、
希愛はふにゃっと笑う。
「ありがと…那由汰…」
那由汰にはいっぱい優しくしてもらっている。
近づいたこの距離がとても温かい。