Sion
そんな那由汰に希愛は何も返していない。
だけど、那由汰は別にいいよと笑う。
ちゃんとお礼をしたいのに…
頭をめぐらしていると、希愛はふと思いつく。
「那由汰、今日私の家でご飯食べていかない?」
那由汰に出来るのはこれくらいしかない。
それに、那由汰がくれば爽理もきっと喜ぶだろう。
二人はとても似ている。
爽理も那由汰には凄く懐いていた。
何より、家族が喜ぶだろうと思った。
那由汰はぱちぱちと目を瞬きさせる。
「…突然だね」
「…ダメ…かな?」
「ダメじゃない。家にはちゃんと連絡しておくから」
それを聞き、自然に笑みが溢れる。
「よかった!」
そんな希愛を見つめ、那由汰はぼそっと呟く。
「…無自覚なんだよね、相変わらず」
その呟きは希愛の耳には届かなかった―――。