Sion




希愛の家に着くと、急いで荷物を部屋に運んだ。
そこは元々爽の部屋だった。




理緒と爽理の為に残しておいた部屋だ。
爽理は爽の香りが残った部屋で嬉しそうに荷物を解く。




その姿を見て、自然と笑みが溢れた。
爽理は爽のことを知らない。




だけど、まるで知っていたように爽の香りを感じ取っていた。
爽は…幸せだと思う。




理緒にも爽理にもちゃんと想われている。
そんな二人を守るように爽は傍にいるだろう。




希愛が爽の夢を見ることはもうなかった。
那由汰と付き合い始めてから、夢に出てこない。




もう大丈夫。
爽は弱かった希愛の心を静かに押していたのかもしれない。




そう思うとただただ感謝で一杯になる。
爽が居なくなって目の前が真っ暗だった。




けれど、爽は傍にいてくれた。
傍にいて…今まで背中を押してくれていた。




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