Sion
まだそういうわけではないのに。
でも、認めてもらえなかったとしても関係を変えるつもりなんてない。
那由汰は支えてくれて、傍にいてくれて…
それに答えたくて、気が付けば惹かれていた。
そんな気持ちを消せることはできない。
だが…母親は気づいているだろう。
希愛がここまで明るく戻れたのは那由汰のおかげだということ。
気づいていたから、『素直な子ね』と言ったのだ。
思い出すと自然に笑みが零れてしまう。
そんな希愛を見て、那由汰は不思議そうに首を傾げる。
「…嬉しそう」
「なんか…幸せだなって」
こうしてる時間が訪れるなんて思ってなかった。
自分にはないと思っていた。