Sion




それにつられたように那由汰は唇を動かす。
それは音となって、那由汰の唇から発せられた。




「…ゆの」




女の人は嬉しそうに微笑む。
その表情は子どものような笑みじゃなく、少し大人っぽかった。




「ただいま、なゆ」




二人が抱き合ったわけでも、
距離を縮めたわけでもないのに…




ざわざわと草木が揺れた気がした。
嫌な予感と複雑な感情が混ざって、ただ見ていることしかできなかった。




何も言わず二人は見つめ合っていた。
それを破ったのは女の人のほうだった。




「なゆ、久しぶりだね。全然変わってなくて安心した…」




「ゆのは…変わったな」




那由汰が目を細め、微笑んだ。




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