Sion
目の前で微笑む弓音もどう?と首をかしげている。
邪魔じゃないんだろうか。
場違いじゃないだろうか。
少しの不安が芽生えながらも、希愛はこくりと頷いた。
「じゃあ、一緒に行きましょ」
「…ところで、その大きい荷物はどうすんの」
那由汰は弓音の持っていたスーツケースを見下ろす。
確かに見た感じ、3泊以上入りそうな大きなスーツケースだ。
前行ったが、スタジオはここから10分以上掛かる。
そんな大きなスーツケースを持っていくのだろうか。
「どうするのって言われてもね。私がこっちに知り合いいないってこと、知ってるでしょ?」
「何処に泊まるつもりだったんだよ」
と、那由汰は呆れ顔で言う。
「ゆづのところかホテルに泊まるつもりだったよ?ゆづのところも一日しか居られないけど」
「そんなんで良くこっちに来れたね」
那由汰は静かにため息をついた。