Sion
『仕方がないでしょ』と言う声が弓音から発せられる。
「急だったんだもん。ホテルも予約してないし…今日はゆづの家に泊まらしてもらって、あとはホテルに泊まるよ」
と、弓音が肩をすくめる。
そんな弓音のスーツケースを那由汰は掴む。
弓音は目を丸めた。
「…どうしたの?」
「俺の家に泊まればいいよ」
その言葉に弓音はぱちぱちと瞬きをする。
遠慮がちに希愛を横目に見た。
「…いいの?」
「ゆのだったらいいよ。母さんも喜ぶ」
そう言って那由汰は微笑んだ。
少し複雑で不安そうな顔をしている希愛には気づかず。