Sion




だが、これが那由汰だった。
湖季が知る昔から変わらない。




拍子抜けしてしまう。




「確かに変だと思ったよ。いつもならすぐに追い返してたのにさ。女好きではないお前がさ」




「別に嫌いではないよ」




那由汰はそこだけは否定した。
湖季は肩をすくめた。




「お前が好きな女の子って…綺麗な音の持ち主だろ」




「あと、感性が豊かな子。中々居ないんだよな」




決して冗談を言っているわけでない那由汰に湖季は呆れる。
那由汰は昔からそうだ。
職業柄だろうな…と湖季は思った。




「とにかく、目を覚ませよ。先生来るぞ」




「…ん」




そんな二人の会話を希愛と律花はずっと静かに聞いていた。
聞いていて、律花は眉を潜めていた。




嫌いなタイプと言葉を漏らしていた。
そんな律花に希愛はずっと首を横に振っていた。





< 27 / 303 >

この作品をシェア

pagetop