Sion
だが、これが那由汰だった。
湖季が知る昔から変わらない。
拍子抜けしてしまう。
「確かに変だと思ったよ。いつもならすぐに追い返してたのにさ。女好きではないお前がさ」
「別に嫌いではないよ」
那由汰はそこだけは否定した。
湖季は肩をすくめた。
「お前が好きな女の子って…綺麗な音の持ち主だろ」
「あと、感性が豊かな子。中々居ないんだよな」
決して冗談を言っているわけでない那由汰に湖季は呆れる。
那由汰は昔からそうだ。
職業柄だろうな…と湖季は思った。
「とにかく、目を覚ませよ。先生来るぞ」
「…ん」
そんな二人の会話を希愛と律花はずっと静かに聞いていた。
聞いていて、律花は眉を潜めていた。
嫌いなタイプと言葉を漏らしていた。
そんな律花に希愛はずっと首を横に振っていた。