Sion




那由汰に連れられたのは、那由汰の家だった。
一週間前、遊びに行こうとしたが弓音に会い、それどころではなかった。




少し残念に思いながら諦めていたのだ。




今は弓音が泊まっている。
だから、希愛はあまり那由汰の家に行きたいとは思わなかった。




「…那由汰」




那由汰を見ると、玄関を開けて中に入っていく。
希愛はその那由汰の背中を追いかけた。




「…お邪魔します」




挨拶をするが、誰も玄関に来る様子はない。




「上がって」




希愛は靴を脱ぎ、揃えた。
階段へと上がる那由汰を追う。




「…ご家族は?」




「しばらく仕事でいないよ。ゆのは弓弦さんの手伝いしてるから出かけてるし」




「お仕事って…」




「言わなかったっけ?音楽関係の仕事してる」




だから那由汰もピアノを弾いているんだろうか。
元々、那由汰の家は音楽一家だったようだ。




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