Sion




那由汰は肩をすくめた。
言わないつもりだったが、言わなければ希愛は納得しないだろう。




「…初恋の人、だよ」




小さい頃の話だ。




弓音は那由汰を理解してくれた。
いつもそばにいて、お互いを励ましあって…




いい友達でいいライバル。
そんな中で違う気持ちが芽生えた。




でも、それは那由汰だけだった。




弓音は音楽が大好きだった。
弓音は恋よりも音楽を取ったのだ。




那由汰はそれでいいと思っていた。
だから、口には出さなかった。




引越しするまでずっと抱えたままだった。
弓音にも弓弦にも明かさなかった。




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