Sion
再会したが、二人の間には何もない。
あの頃のまま、変わらずにいる。
那由汰は何も思っていない。
弓音とは音楽で同じ道を歩もうとしている。
引越しする前に抱いた。
それでもいい、と。
だから何も後悔していない。
「それに…俺には希愛がいるし」
今、昔の恋心を抱こうとは思わない。
もうあの頃とは違うのだ。
「…これで安心した?」
「…うん」
沈んでいた希愛がやっと笑みを見せる。
この笑みがあるから、今こうしていられるんだと那由汰は静かに微笑んだ。