Sion




そんなことを希愛が考えていると、ふいに那由汰と視線が合う。
那由汰はじっと希愛を見つめていた。




「…綺麗だな、あんた」




とても真っ直ぐな瞳、真っ直ぐな言葉に希愛はドキッとする。
何も出ない声に歯痒さを感じる。




何も言えない希愛に、那由汰は立ち上がって近づく。
綺麗な長い指で頬に触れる。




「…しかも温かい」




近づいた顔にドキドキする。
顔の熱が上昇しているように感じた。




「…いこ」




力強い大きな手に掴まれ、引っ張られる。




「の、希愛っ!」




「おい!那由汰っ!」




背後で二人が叫ぶ声が聞こえる。
希愛は微かに胸にある熱い何かを抱きながら、引かれるがまま教室から出た。





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