Sion




横で並んで歩くと緊張する。
ちらりと横に視線を動かすと、弓音の視線とぶつかる。




弓音はふわっと微笑む。
弓音は昔からこうなのだろうか。




なんとなく…那由汰が好きになった理由がわかる。




優しくて花のよう。
気遣ってくれて、居心地の悪さを感じさせない。




話をしなくても空気が張り詰めているわけでない。
とても自然で居心地がいい。




弓音はそんな雰囲気を作るのだ。




そんな空気の中、弓音は突然口を開く。




「…花澤さん」




突然名前を呼ばれ、希愛は驚いた。




「は…はい…」




驚きながらも返事をすると、真っ直ぐな視線とぶつかった。




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